太陽光発電所の廃パネル問題とは?何が問題で何が正しい?①

編集部staff

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こんにちは、blog編集部です。今日は最近どこでも目にするようになった太陽光発電所の太陽光パネルについて、その廃棄方法や現状の問題について掘り下げてみました!全4回の予定でお送りいたします。


旅する自然電力のでんき -voyage to renewable world-

太陽光発電=環境に良いものだと、私自身も思っていました。でも最近、全国で急激に増える太陽光発電所を見て、あの何百万枚以上もの太陽光パネルが寿命や役割を終えたあと、どうなってしまうんだろう・・・と”不安”になることがあり、一度きちんと知りたいと考えていました。

そこで今回、自然電力グループの 北 俊宏さん(juwi自然電力株式会社 プロジェクトマネージャー)に廃パネル問題について聞いてみました。北さんは前職では産業廃棄物処理事業や家電・自動車・金属スクラップなどの資源リサイクル事業に従事されており、自然電力グループでも発電所建設の際のプロジェクトマネジメントの他、太陽光パネル廃棄問題についても主導しています。

編集部(以下、編):北さん、今日はよろしくお願いします。
早速ですが、”自然電力のでんき”のユーザーの方から、太陽光パネルの廃棄やリサイクルについて質問や”不安の声”をいただくことがあるのですが、私自身あまりよく考えたことがありませんでした。どういった問題があるのでしょうか?

北さん(以下、北):私は普段、大型の太陽光発電所の建設にプロジェクトマネージャーとして携わっていますが、事業者様や地域住民の皆様からも同じように、太陽光パネルの廃棄問題について質問や”不安の声”を頂くことがあります。時にはその不安が原因で太陽光発電事業に反対される方もいらっしゃいますが、皆様からのご質問に一つ一つお答えさせて頂く中で、最後にはほぼ全ての方が納得されて不安も解消されています。

編:ほぼ全ての方が納得とはすごいですね。どういった説明をされているのでしょうか?

北:多くの方と直接お話をすることで気付いたことですが、不安の一番の理由は”複雑な問題を一片から全て理解しようとしていること”によるものなんです。廃パネル問題について報道やニュースで断片的に知っていても、太陽光パネルの構造や種類、有害物質がどこにどれだけ含まれているか、パネルがどのように廃棄処理されていて、廃棄のためにどういった法律があるかといった細かい部分まで全てご存知の方は稀です。

編:そうですよね。私達自然電力グループのクルー(社員)でも、その全ての分野を網羅している人は稀だと思います。

北:はい、だから私がいつも心掛けていることは、問題の理解に必要な基本事項を整理して一つ一つ説明させて頂くことなんです。基本事項の理解が深まると、複雑に絡まっていた糸が解けるように、漠然と持っていた疑問や不安もすっと解消されます。

編:なるほど。では今日はその基本事項を教えて頂けるのですね!

北:はい、今日は皆さんに、廃パネル問題を理解するために必要な5つの基本事項を紹介したいと思います。

基本事項

1:太陽光パネルの種類について~有害物質はどこにどれだけ含まれるのか?
2:太陽光パネルの構造について~太陽光パネルは本当に危険なのか?
3:廃棄物処理法の仕組みについて~廃パネルは有価物か、それとも廃棄物か?
4:処理やリサイクル方法について~廃パネルによって最終処分場が逼迫するのか?
5:関連する法律や組織について~将来、適切に廃棄されず放置や不法投棄が増える?

              ※2~5は、次回以降トピックでお伝えします。

●基本事項1:太陽光パネルの種類について~有害物質はどこにどれだけ含まれるのか?

北:まず初めに、太陽光パネルにはある纏まりごとに呼び名が違うことをご存知でしょうか。主に3つの纏まりがあるのですが・・・

編:3つ?一つは太陽光パネルですよね?2つ目、3つ目は、、、

北:【図表1】は一般的な太陽光発電所の写真ですが、アルミフレーム枠で囲われた1枚単位(赤枠で示した範囲)を、太陽光パネルまたは太陽電池パネル、太陽電池モジュールと呼んでいます。

【図表1】太陽光発電所

 しかし、メガソーラーと言われる大型の太陽光発電所では太陽光パネル数十枚を一纏まりとして架台と言われる台に固定しており、これを太陽電池アレイ(【図表2】参照)と呼んでいます。また、太陽光パネルをよく見てみると、小さな四角形がいくつも組み合わされていることに気付くと思いますが、この10cmから15cm程の四角形を太陽電池セル(【図表3】参照)と呼んでいて、これが太陽光パネルを構成する最小単位となります。

【図表2】太陽電池の単位(セル、モジュール、アレイ)

出典:「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版)」(環境省)より

【図表3】太陽電池セル

編:なるほど。この太陽電池セルが最小単位で、次が太陽電池パネル、その次が太陽電池アレイなんですね。

北:はい、この太陽電池セルは半導体ウェハと呼ばれる太陽光から電子を産み出す素材で出来ており、この半導体ウェハの種類がそのまま太陽光パネルの種類になります。

太陽光パネルは、【図表4】のようにシリコン系、化合物系、有機物系の主に3つの種類に分類されています。ここで重要なことは、半導体ウェハの種類ごとに含まれる有害物質の種類や場所が異なるということです。報道やニュース記事ではよく「太陽光パネルには、鉛やセレン、カドミウム、ヒ素などの有害物質が含まれていて」と言う表現が使われているのですが、1枚の太陽光パネルにこの4つの物質が全て含まれていると誤って理解されている方が多くいます。

【図表4】太陽光パネルの種類

出典:SPV Market Researchの報告書などから編集部で作成

編:私もそのような記事を何度か目にしたことがありますが、全てのパネルに複数の有害物質が含まれていると思っていました。

北:まず、鉛やセレン、カドミウム、ヒ素の4つの物質が、それぞれどの部分に含まれているか見て行きましょう。実は4つの中で、鉛だけ別の場所に使われていて、その他は半導体ウェハを構成する化合物の一つとして使われています。【図表3】で太陽電池セルの写真を紹介しましたが3本の細い縦線が入っていることに気付きましたか?

編:確かに、よく見ると細い線が入ってますね。この線は一体何でしょうか?

北:この細い線は、実は電極の働きをしていて、半導体ウェハに太陽光が当たって発生した電子を集めて電気として運ぶ役割をしています。まさにケーブルや電線と同じ役割ですね。

編:へー、この細い線が太陽光によって生まれた電気を運んでいるんですね。

北:はい。そして、この電極には銀(Ag)や銅(Cu)、錫(Sn)といった原料が主に使用されていますが、有害物質と言われる鉛(Pb)も添加剤として少しだけ使用されていることがあります。

編:この細い線のほんの一部に鉛が使われているなんて知りませんでした。でも、”使用されていることがある”ということは、鉛が使用されていない電極もあるということですか?

北: 鋭いですね。その通りで、1990年代から2000年代に製造された太陽光パネルの電極には数%から数十%の鉛(大型のパネルの場合、重量にして数グラム以下)が使用されていたと考えられていますが、2010年代以降では鉛フリーの電極も増えており、鉛の含有率は全体的に減少しています。

編:鉛フリーのものも増えてきているのは良いことですね。ところで、そもそも鉛にはどういった有害性があるのでしょうか? 

北:鉛に限らず、重金属(比重が4以上の金属)と言われる物質は、過剰摂取すると人間にとって有害なものが数多くあり、どの金属や化合物が有害で、どれが大丈夫かは一概に言えませんが、多くの場合過去からの経験則によって有害かどうか定められています。

突然ですが、小学校や中学校の時に授業でラジオを作りませんでしたか?

編:作りましたけど、、、それが有害物質と関係あるのですか?

北:はい。ラジオなど電子機器を組み立てるときに使用するハンダ(金属同士の接合に使われる合金)には、その昔鉛が多く使われていました。しかし、多くの産業で鉛入りのハンダを使用した作業員の健康被害が報告されたため、鉛に有害性があることが分かりハンダへの鉛使用が禁止されたのです。今では、鉛やセレン、カドミウムなどは一度摂取すると体内に蓄積して内臓疾患や中毒症状を起こすことが分かっています。このような歴史的背景も知っておくと有害物質に対して正しい理解ができるようになります。

編:なるほど。ありがとうございます。

北:次に、半導体ウェハごとの含有する有害物質の種類について見て行きましょう。一つ目のシリコン系ですが、シリコンウェハには有害物質は全く含まれていません。

編:ということは、シリコン系の太陽光パネルに含まれる有害物質は電極の中の鉛のみということですか?

北:その通りです。そして、とても重要な点は、世の中に普及している約95%以上の太陽光パネルはシリコン系ということです。鉛以外の有害物質が含まれる化合物系は5%未満しか普及してないのですが、パネルの種類の説明なしに有害物質だけが強調されて、あたかも全てのパネルに4つの有害物質が含まれているよう記事があることは一つ問題ですね。

編:なるほど。パネルの種類だけでなく普及率も併せて理解することが重要なんですね。

北:はい。もちろん、5%未満と普及率は少なくても、化合物系にセレン、カドミウム、ヒ素が含まれていることは事実ですが、正しい理解のためには2つ重要なポイントがあります。1つ目は、ヒ素(As)が含まれるのはGaAs系ウェハ、セレン(Se)が含まれるのはCIS系やCIGS系ウェハ、カドミウム(Cd)が含まれるのはCd-Te系ウェハと含有する有害物質は種類ごとに分かれているということです。2つ目は、これらの化合物系ウェハは何も太陽光パネルだけではなく、世の中の多くの半導体電子機器で使用されているということです。

編:太陽光パネルに限ったことではないんですね。

北:はい。太陽光発電は世の中から大変注目されているため、時に、一部分だけを切り取って太陽光発電が良くないように報道されることもありますが、正しい知識があれば太陽光パネルも他の電子機器と同じだと理解できます。また、普及率の観点からシリコン系太陽光パネルの処理方法は広く一般化されている一方、化合物系の処理はまだ一般化されていなため有害物質の適正な処理ノウハウをもったパネルメーカーが自主的な回収や処理を行っているケースが多いです。(今回の記事では主にシリコン系の事例について紹介します。)※有機物系はまだ一般的に普及していないため対象外

編:ここまでとても勉強になりました。これまで太陽光パネルに有害物質が含まれていることを漠然と理解していましたが、どこに、どの有害物質が、どのくらい含まれているか分かったので少しですが不安が解消されました。とても盛りだくさんの内容でしたが、次回の基本事項2が楽しみです。


出典:

https://xtech.nikkei.com/dm/atcl/column/15/286991/122700071/?ST=msb