自然電力がつくる唐津の風力発電現場を訪ねました

編集部staff

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こんにちは。
マガジン編集部の杉山です。

現在、佐賀県の唐津では、とあるプロジェクトが進行しています。
そう、自然電力初となる風力発電所の建設プロジェクトです。
今回は、1ヶ月ちょっとしかない風車の組み立て期間中に現場を見学できるということで、マガジン編集部で工事現場を7月末に訪ねた際のレポートをお届けします。

なぜ風力なのか、なぜ唐津なのか。そもそも風車ってどうやって建てられるのか。
社内でも関心を集めるプロジェクトに迫ります。

<ナセルの運搬風景(写真提供:風力開発部)>


唐津を訪れた7月末は、非常に蒸し暑く、「暑い…」と取材中何度こぼしたか分からないほどの真夏日でした。
現場を訪ねる前に、まずは福岡市内にある自然電力本社に集合。
案内して下さったのは風力開発部の大倉さん、井手さんです。

<風力開発部の大倉さん(右)、井手さん(左)。よろしくお願いします!>

福岡のオフィスから車で出発し、時たま視界に飛び込む玄界灘に歓声を上げつつ、進む事1時間。
到着したのは佐賀県唐津市の唐津港です。

<唐津港にて>

杉山 最高の海日和ですが、それにしても暑いですね。東京とは比べものにならないくらい暑い…。(なんとこの日の福岡は最高気温35.9℃!)

井手 港だから、日差しを遮るものがないですからね、特に。

杉山 照り返しもすごいですね。

大倉 みなさん、これがナセルです。

一同 おお!

大倉 ナセルは風車のタワーのてっぺんに置きます。この中には発電機、ギアボックス、ブレーキ装置など、風車を動かすのに欠かせない装置をいっぱい詰めます。

杉山 ということは、完成後のメンテナンスではここに人が入るということですか?

大倉 そうです。組み立ててしまうとなかなか入れないので、この機会にぜひ。

<脱出口から入ってみます>

杉山 思ったよりも動けるスペースは狭いんですね。そして暑い…。

井手 夏の作業は本当に大変ですよ!今は密閉されてないですけど、実際は密閉されて、さらに発電機とかが熱を出しますからね。
はい、では次に行ってみましょうか。

大倉 タワーです。先ほど見てもらったナセルやこれから見るブレードですね、これらを支える役割を果たします。タワーの高さは78mです。

一同 おおお!大きい!

杉山 これは何本に分かれているんですか?

大倉 4本です。下の方が短くて太く、上にいくほど細長くなります。1番上は20mくらいはあるかな。
見てください。ボルトの穴が内側にあります。大きいでしょう?これを1本ずつ留めていきます。

<大きなボルトの穴。4本のタワーの繋ぎ目部分にあり、タワーを重ねてはここでボルトを締める作業を繰り返します>

編集部員 こどもが見たら喜びそう!

大倉 せっかくなので、タワーの中にも入ってみてください。

編集部員 広いですね。…直径はどれくらいなんでしょうか?

大倉 直径は4.3mあります。最終的にはこのタワーの中にエレベーターが付きます。もちろんそれまでの作業はこのはしごを使いますが。

杉山 78mをはしごで…。ところで、あの愛らしいフォルムの部品はなんですか?

井手 あれはハブですね。ハブを使ってブレードの付け根をナセルに固定させます。またナセルは、風車が風の向きに合わせて動くための役割も果たします。
ナセルの上部には風向風速計が入っていて、そのデータに従って適切な方向を自動で向くようになっています。

大倉 ではちょっと場所を移してブレードを見に行きましょう。

編集部員 美しい…。風車によってブレードの形は変わってくるんですよね?

大倉 そうですね。今回は日立さんのHTW2.0-86という製品なんですが、これはダウンウィンド方式を採用しています。

風車にはダウンウィンド方式とアップウィンド方式があるのですが、違いを簡潔に言ってしまえば風向きに対するブレードの位置です。アップウィンド方式は風上にブレードがあります。一方、ダウンウィンド方式では風上にはナセルがあり、ブレードは風下にあるんですね。
ダウンウィンド方式は風上から見て、ブレードが下方に傾いているので、下から吹き上げる風を効率良く使う事ができます。

そういう点で言えば、風車によってブレードの形も変わってくると思います。

編集部員 なるほど。地域の特性に合わせて風車も選ぶんですね。

杉山 先ほどのタワーと同じく、ブレードも随分大きいですね。

大倉 42mあります。

一同 長い!

大倉 風車は受風面積に応じて発電量も大きくなってくるので、ブレードはどんどん大きくなってきてますね。この風車の発電容量は定格出力で1,990kW。フルで1年間稼働したとすると、年間350万kWhの電力を生み出し、これは一般家庭約1,100世帯の消費電力を賄う事ができる数字です。

なので、風力発電業界では風車のハブの位置を高く高く、ブレードも長く長くしようと。ただ、高く長くすればするほど風の影響を受けやすいということなので、九州みたいに台風などが多い地域だと設計基準が厳しくなってきます。

一同 なるほど。

井手 いっぱい回ってほしいし、壊れてほしくもない。そうなると、ブレードは「強度」と「軽さ」が大切になってくるんですね。
ちなみに、この先端の丸印は、レセプターと言って雷を受ける役割を果たします。

大倉 ではそろそろ建設現場を見に行きましょうか。

杉山 貨物船で運ばれてきた部品を港で水切りし、その後はどのような流れで建設現場まで運ぶんですか?

大倉 まず、港から山道に入る手前までトレーラーで運びます。これは夜間に道路を通行止めにさせてもらって行います。
山道にはトレーラーでは入っていけないので、山道手前で山道を進める特殊車両に載せます。ものすごい数のタイヤがついています。

一同 !!?

大倉 そして建設現場近くまで持ってきたら、クレーンで吊り上げて重ねていきます。…と、こんな流れなんですけど、実際に見てみるのが早いですね。

<タワーを輸送する特殊車両>

大倉 夜間にここまでトレーラーで運び、昼間にこのタイヤがたくさんついた特殊車両で山道を運びます。

クルー すごいタイヤの数…。

大倉 では、次のポイントに向かいましょう。

<ブレードを輸送するための特殊車両>

大倉 先ほどがタワーを運搬するための特殊車両で、これがブレードを輸送するための特殊車両です。ブレードを60°の角度まで斜めに起立させることができます。

<実際にこの特殊車両を使っているところの写真を後日送ってもらいました。すごい!>

大倉 ブレード1本で42mもあるので、持ち上げないと通れないんですよね、ここから先は。さあ、みなさん、もう少しでゴールですよ。

<チラッと見えたのは…>

<タワー基礎でした!>

大倉 これ、もう埋まっていて見えないですけど、23mの杭が周りに8本埋めてあるんです。この基礎も今、見えているのはほんの一部で、大体は埋まっちゃってる。この基礎を1つ作るのに約550㎥ものコンクリートを流し込みました。1日にミキサー車が130台くらい。

一同 想像できない…。

大倉 今回のプロジェクトは、湊地区に1基、相賀地区に1基の風車を同時に建設しているんですが、相賀の方(上の基礎写真は湊)は既にタワーの一部が組み立ててあるので、見に行ってみましょう。

<相賀地区の建設現場>

クルー …立ってる!

井出 今まで自分たちが地道にやってきたことが、こうやって形になってきたのを見ると…この時点ですでに泣きそうになりますね…。

大倉 午後の間に山道を運ばれてきたものを、翌日の朝、クレーンで吊るして積み重ねていきます。先ほど見た内側をボルトで留めながら。

タワーを4つ積み上げたら、ナセルを置いて、ハブを付け、ブレードを1枚ずつ取り付けていきます。資材置場の都合上、1日に1部品しか運べないので、この取り付け作業に大体2週間かかります。
組み立て自体は1ヶ月ですが、ここに来るまで約2年。うーん、こうして立った姿を見ると、やっぱり感慨深いですね。


現場を見学してみると、そのスケールの大きさに驚きました。
やはり実際に足を運ぶこと、自分の目で見てみることの大切さを再確認しました。

2年の歳月をかけた努力がようやく形になる1ヶ月間。そのうちの1日の様子に立ち会えたことは、忘れられない、貴重な体験となりました。
現在、現場では電気工事が行われています。その後、試験運転や最終点検を経て、2018年2月に運転開始を予定しています。
風力開発部の挑戦はまだまだ続きます。

 

 

【風車概説】

<風車の各パーツについて>

ナセルとは:伝達軸、増速機、発電機等を収納する部分

タワーとは:ハブ、ナセルを支える部分

ハブとは:ブレードの付け根をナセルに連結する部分

ブレードとは:回転羽根、翼

参考情報:「国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構」,<http://www.nedo.go.jp/fuusha/kouzou.html