電力自由化でCO2排出量は削減できるのか?

川島 悟一

川島 悟一 (商品設計)

 

“電力自由化”によって、多くの電力会社や電力メニューが登場しました。中には、発電時のCO2排出量の削減を意識したメニューもあり、電気の購入先を変えることで、CO2排出量を下げることが可能となっています。しかし、電力会社を選ぶ際の基準となる「CO2排出係数」は算定方法が難しく、注意すべき点が多々あります。自社にあった電力を選ぶために、担当者が知っておきたい「CO2排出係数」についてしっかりと解説します。


 

■基本をおさらい!発電に係るCO2排出係数の算定方法は?

CO2排出量削減を意識する際に、重要なのは電力ごとの“CO2排出係数”です。CO2排出係数は、「発電量1kWh当たりのCO2の排出量」を表しており、下記のような算定方法で算出されます。

 

CO2排出係数(kg-CO2/kWh)=発電時のCO2排出量kg-CO2 ÷ 発電で得られた電力量kW

 

これらのCO2排出係数を電気使用量に乗じることで、自社の電気使用によるCO2排出量ができます。

 

電力によるCO2排出量=電力使用量(kWh)×CO2排出係数(kg-CO2/kWh)

 

例えば、電気使用量が同じである場合、CO2排出係数が高いか、低いかによって、CO2排出量は変化します。つまり、CO2排出係数が低い電力会社(小売電気事業者)と契約したり、契約プランを切り替えたりすることで、CO2排出量の削減が可能になるのです。

 

■実例にそって解説!知っておきたいCO2排出係数の「仕組み」

これらの計算については、「特定排出者の事業活動に伴う温室効果ガスの排出量の算定に関する省令」(平成18年経済産業省・環境省令第3号)によって、算定方法が定められています。具体的な例をもとに解説します。

 

<図1 CO2排出係数の考え方>

【想定ケース】

再エネ利用を推進したい企業A(需要家A)が、「再エネ10%」というメニューを新電力(小売電気事業者B)から購入したと仮定します。実際の電力供給の結果、電源構成比は以下となりました。

※非化石証明書(再エネ指定)を10%分以上購入済み

ただし、FIT制度による再エネの電力は、「CO2排出量ゼロ」という「環境価値」を持っていませんので、需要家Aは、非化石証書(再エネ指定)を購入しています※。

(※FIT電気は、電気利用者が広く負担する再エネ賦課金をベースにしてつくられる電気であることから、国の制度上、「CO2排出量ゼロ」という環境価値を持たない、という定義がされています。そのため、環境価値を付けるためには、非化石証書(再エネ指定)を購入する必要があります。)

 

【算定方法】

電力のCO2排出係数の計算は、2つの段階に分けで計算します。

【段階1】調整前の排出係数の計算

“排出係数が分かっている電源”を電源構成比の割合で案分する

【段階2】調整後の排出係数の計算

“排出係数の分からない電力”や、非化石証書等の環境価値の償却を加味する

 

■【段階1】調整前の排出係数の算定方法

CO2排出量の計算では、一旦、「調整前排出係数」というものを計算します。これは、その小売電気事業者の当該メニューの電源構成比から仮に計算されるものです。

 

以下のように計算を行います。

● 再エネ(FIT)電力は、一旦排出係数はゼロとして計算します。
● 卸電力取引所からの調達電力は、一旦無視して計算します。

このケースの場合は、0.708kg/kWhとなりました。

 

<図2 調整前排出係数の算定方法>

しかし、このままでは排出係数として相応しくないことがあります。例えば、非化石証書などの環境価値を購入するなど、CO2排出量を削減できる要素がありますが、これらが加味されていません。また、この状態では卸電力取引所から購入した電力分の排出係数も加味されていませんし、FIT電気のCO2排出係数はゼロとして計算されてしまっています。そこで、「調整前排出係数」からCO2排出係数の調整を行い、「調整後排出係数」を算出します。

 

■【段階2】調整後の排出係数の算定方法

<図3 調整後排出係数の算定方法>

調整は、以下のように考えていきます。

● 再エネ(FIT)のCO2排出係数は、地球温暖化対策法(以下、「温対法」)の決まりによって、火力発電による電気なども含めた全国平均値(0.550kg/kWh)に設定します。
● 卸電力取引所からの電力の排出係数は、実際に取引所で売買された電源の構成比と排出係数から計算された数値を用います。
● 非化石証書等の環境価値の償却分を削減(オフセット)します。

実際には、これ以外にも多くの細かな調整事項がありますが、需要家が電力を選ぶ際に知っておきたい要素は、大きくこの3点です。このケースでは、調整後排出係数は、0.659kg/kWhとなりました。調整前より低くなりましたね。

 

■要注意!見かけのCO2排出係数に惑わされない!

電気を使う企業にとっては、温対法の報告義務やCSRのために、電力によるCO2排出量削減が重要になっています。特に、これまで省エネ活動を頑張ってきて、これ以上の省エネが難しいという場合、次の一手として、使用電力のCO2排出係数の削減は、非常に有効な手段になります。

しかし、注意したいポイントがあります。温対法上、需要家が用いるCO2排出係数は「調整後排出係数」となりますが、上記のケースでは、0.659kg/kWhとなり、全国平均や卸電力取引所のCO2排出係数より結果的に大きくなってしまっています。プランとしては再エネの割合が高い電気を選んでいるのですが、このような計算(調整)によって、CO2排出係数が大きくなってしまう可能性もあります。

また、CO2排出係数が低くてもその内実として、電源は石炭火力で、「環境価値」を使うことで(「環境価値」をお金で買い取ることで)、CO2排出係数を下げた電気となっている、という場合も考えられます。現在、世界的に脱炭素の流れがありますが、そのような状態では、脱炭素とはいえません。算定方法がわかると、CO2排出係数に注目するだけでは見えない部分が理解できます。

 

■環境省が公表!「小売電気事業者の排出係数」を確認するには?

さて、これらの排出係数については、例年12月に環境省から、事業者別の排出係数が公表されています。さらに、同じ電気事業者であっても提供する料金メニューによって、排出係数が異なることがあるため、事業者が希望すれば料金メニュー別の排出係数を公表することができます。メニュー別の排出係数については、例年7月に公表されます。

それぞれ、「電気事業者別排出係数」と「メニュー別排出係数」といいますが、CO2排出量を正しく把握していくという観点では、メニュー別排出係数が公表されたメニューを選んで電力を購入することが望ましいと言えます。なぜなら、メニュー別排出係数は、実際に電気を使った年度の電源のCO2排出量から計算しているためです。一方の事業者別排出係数は、1年度前のCO2排出係数を用いるので、需要家の需要の実態とは乖離している可能性があります。

 

▽電気事業者別排出係数の一例

出典:『電気事業者別排出係数(特定排出者の温室効果ガス排出量算定用)-平成28年度実績-H29.12.21環境省・経済産業省公表』より

■さいごに

いかがでしたか。前回のコラムでもお伝えしましたが、電力の調達は、その企業のポリシーを反映しているとも言えます。電力会社やメニューを選ぶ際には、CO2排出係数の数値を見るだけではなく、その根拠、電源構成や係数オフセットの方法について確認した上で、会社のポリシーに合っているか検討することをオススメします。

また、少し将来的な話ですが、今後以下の流れが予想されているため、現在お使いのままの電力会社や電力メニューの見直しを行わず、そのまま利用し続けていると、CO2排出係数が増えていき、結果、企業のCO2排出量が増える可能性があります。

● CO2排出係数の低い電力を売る電力会社やメニューを選ぶ需要家が増加する。
● 全体の電力のうち、再エネなどのCO2排出係数の低い電源については、CO2排出係数の低い電力を選んだ需要家に優先的に割り当てられる。
● 石炭火力などのCO2排出係数の高い電源は、CO2排出係数の低い電力を選ばなかった需要家に割り当てられる。(CO2排出係数の低い電力を選ばなかった需要家のCO2排出係数が高くなる。)

「知らない間にCO2排出量が増加していた…」ということにならないためにも、定期的な見直しが重要となります。今回お伝えした計算の考え方が、参考になりましたら幸いです。

 

この記事は『おしえて!アミタさん』(アミタ株式会社)に掲載されたものを転載しています