太陽光発電所の廃パネル問題とは?何が問題で何が正しい?②

編集部staff

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こんにちは、blog編集部です。今日は最近どこでも目にするようになった太陽光発電所の太陽光パネルについて、その廃棄方法や現状の問題について学ぶ2回目です。全4回の予定でお送りいたします。


旅する自然電力のでんき -voyage to renewable world-

第一回目では、「基本事項1:太陽光パネルの種類について~有害物質はどこにどれだけ含まれるのか?」について教えていただきました。

引き続き、自然電力グループの北 俊宏さん(juwi自然電力株式会社 プロジェクトマネージャー)に伺っていきます。北さんは前職では産業廃棄物処理事業や家電・自動車・金属スクラップなどの資源リサイクル事業に従事されており、自然電力グループでも発電所建設の際のプロジェクトマネジメントの他、太陽光パネル廃棄問題についても主導しています。

自然電力グループでも太陽光パネル廃棄問題について主導頂いてます。

基本事項2:太陽光パネルの構造について~太陽光パネルは本当に危険なのか?

北:次は太陽光パネルの構造について見て行きましょう。早速ですが、我々自然電力グループでは72セル型という大型の太陽光パネル(縦12枚×横6枚計72枚の太陽電池セルで構成されているパネル)をよく使用しています。大きさが、だいたい縦2m、横1m、厚さ4cm程あるのですが、この1枚のパネルでどのくらいの重量があるかご存知ですか?

編:とても大きいですね。うーん、10kg以上はありますか。

北:もう少し重くて、72セル型で約22kgあります。

編:約22kgですか。一人で持ち上げるのも大変そうですね。

北:大型のパネルになるとかなりの重量になりますが、その内約60%の重量を占める素材があるのですが、何だと思いますか。

編:それは知ってます。ガラスですね。

北:その通りです。太陽光パネルは広義ではテレビやエアコン、他の家電製品と同じように電気機械器具(以下、電気機器とする)に分類されますが、他の電気機器と違う特徴は大部分がガラスだということです。そして、この特徴が次の基本事項3でお話する、「太陽光パネルは有価物なのか廃棄物なのか」を決める重要なポイントにもなります。

編:ガラスの割合が有価物か廃棄物のポイントに!それは楽しみです。

北:では次に、ガラス以外にどういった素材で構成されているか見てみましょう。【図表5】を見てください。

【図表5】太陽光パネルの構造

一番大事な太陽電池セルは酸化によって劣化しないように上下をEVAと言われる封止材で密封コーティングされています。次に表面に保護ガラスを、裏面にはプラスチック素材のバックシートで保護し最後にアルミフレーム枠で固定しています。

 重量比で見ていくと、ガラスの次に多いのはアルミフレームで約15%程、次にバックシートやジャンクションボックス、封止材等のプラスチックが約20%弱、太陽電池セルは5%いかないくらいの割合になります。

編:ガラスとアルミフレームの2つで全体の80%近くの割合を占めているとは驚きでした。

北:太陽光パネルの構造が大体わかったところで、今回の主題である「太陽光パネルは本当に危険なのか?」について以下3つの視点で考えてみましょう。

 ①電気的に帯電している可能性があるから危険?

 ②ガラスが割れてケガをする恐れがあるから危険?

 ③事故や災害の際に有害物質が流出・拡散するから危険?

北:まず、①については、もちろん発電中やパネルを取り外した直後、事故や災害でパネルが落下した状態などでは、帯電している可能性があり不用意に触れることは避けるべきです。ただ、必要以上に恐れることはなく、基本的にメガソーラーと呼ばれる一定の大きさの発電所は柵や塀等で囲い一般の方が近付けないようにすることが法律で定められていますし、一般的な電気機器と同様に注意して取り扱えば全く問題ありません。また、②についても、時々事故などでパネルが割れている写真を見ますが、太陽光パネルに限らず通常のガラス製品と同じように注意して扱えば問題ありません。ここまでは問題ないと思いますが、次の③は説明会等でも一番多く質問を受けます。

編:はい、私も③の有害物質の流出や拡散が一番気になっています。

北:有害物質の流出や拡散と言葉だけ聞くと不安な気持ちになるのもわかりますが、ここまで学んだ基本事項1と2の知識を基に冷静に考えれば恐れる必要はありません。

まず、シリコン系パネルの場合、どの有害物質がどこに、どれくらい含まれていましたか?

編:太陽電池セル上の細い線が電極で、その中に鉛が少し含まれています。また、最近は鉛フリーの電極も増えていることも覚えています。

北:その通りです。次に、その太陽電池セルと電極はあるもので保護されていましたが覚えていますか?

編:はい、EVAと言われる封止材で密封コーティングされ、更にガラスとバックシートで保護されています。

北:素晴らしいです。では、ここで事故や災害が起きて太陽光パネルが飛ばされたり、折れ曲がったり、ガラスが割れてしまったケースを考えてみましょう。有害物質の鉛は流出や拡散すると思いますか?

編:うーん、電極の中に鉛が使われていると言ってもかなり少量ですし、電極が付いた太陽電池セルは密封されてガラスで保護もされているので、すぐに流出や拡散することはイメージできないですね。

北:その通りです。もちろん、壊れたパネルを何年もずっとその場に放置していると、流出や拡散してしまう可能性がゼロとは言えませんが、これは他の電気機器にも同じことが言えます。どんな時でも、まずは基本事項を整理し、平均的な広い視野で判断することが大事だと思います。

編:おっしゃる通りですね。とても勉強になりました。

●基本事項3:廃棄物処理法の仕組みについて~廃パネルは有価物それとも廃棄物?

北:突然ですが、質問です。日本の法律ではゴミを主に2種類に分類しているのをご存知ですか?

編:うーん。燃えるゴミと燃えないゴミですか?(わかりません・・・💦)

北:正解は、一般廃棄物と産業廃棄物です。

編:あ、どちらも言葉は聞いたことがあるのですが、あまり馴染みが無くて、、

北:簡単に説明すると、各家庭や企業の事業所等から排出される生活系のゴミは一般廃棄物と定義され、その収集運搬や処理責任は所在の市町村にあります。一方で、企業等の事業活動によって排出されるあらゆるゴミは産業廃棄物として20種類に定義され、その収集運搬や処理は全て排出事業者の責任となります。これらは「廃棄物と清掃に関する法律(以下、廃棄物処理法とする)」の中で規定されています。

【図表6】廃棄物の分類

出典:日本産業廃棄物処理振興センターの資料より、編集部で作成

編:なるほど。

北:最初に私は太陽光発電所の建設に携わっていると紹介しましたが、例えば太陽光パネルを1000枚くらい設置すると、どうしても1,2枚は落としたり傷つけたりして使えなくなった廃パネルが発生します。その場合、我々は事業活動を行っている企業なので排出事業者として産業廃棄物である廃パネルを適切に処理しなければいけません。

ここで、そもそもの話ですが、なぜ廃パネルは”廃棄物”なんでしょうか?

編:それは、、壊れてて使えない不要物だし、有害物質の鉛も入ってるからじゃないんですか。

北:半分正解なんですが、一番の理由は素材としての価値がないから、つまり有価物でないから廃棄物なんです。

編:え、どういうことですか?

北:例えば、発電所の建設中には廃パネル以外にも金属くずや廃ケーブルなど我々にとっては不要な物がいくつか発生しますが、それらは廃棄物になりません。なぜなら、金属くずや廃ケーブルは素材としての価値があるため有価物として売買されるからです。

編:有価物としての価値があれば、そもそも廃棄物にならないんですね。有害物質が含まれていれば無条件に廃棄物になると思っていました。

北:そのように間違えて理解してる人も実際多いですね。例え有害物質が含まれていても、その適正処理も含めて有価であれば廃棄物になりません。廃携帯電話が良い例ですが、携帯電話の中にも厳密には微量の有害物質が数種類含まれていますが、それ以上に金(Au)や銀(Ag)、パラジウム(Pd)などの貴金属が多く含まれているため一定量が集まると有価物として市場で売買されています。

編:なるほど。では、廃パネルには素材としての価値がないということなんですね?

北:結論から言えばそうです。基本事項2で紹介した太陽光パネルを構成する素材の割合を覚えていますか?

編:はい、ガラスが一番多くて60%程、次にアルミフレームが15%程でした。

北:素材の価値評価には運搬費用や分解・精製費用も考慮する必要があるのですが、ガラスは重く運搬費用が掛かる上、ガラスだけをきれいに分別して精製するにはより費用が掛かり、素材としての価値はマイナスになってしまうのが現状です。またアルミフレームは、アルミ単体であれば有価物として市場で取引されていますが、パネルから取り外す費用を考慮すると、ガラスのマイナスを補うほどの価値はありません。このように、廃パネルが有価物でないことが廃棄物であることの前提になっていることを覚えておいてください。

編:わかりました。

北:なぜここで有価物と廃棄物の話をしたかというと、実は廃パネルの”リユース”で一つ気を付けないといけないことあるからです。

編:リユースって、再利用のリユースですか?

北:はい、そのリユースです。実は時々、我々の会社にも廃パネルをリユースするので買い取らせてほしいと依頼がくることがあります。

編:さっき価値が無いと言っていた廃パネルを買い取るんですか?でも、もともと廃棄される予定のパネルが再利用されるなら、良いことのように思えますが何が問題なんでしょうか?

北:本当に再利用されるなら良いのですが、安く買い取られたパネルの行き先を詳しく調べてみると日本国内ではなく海外、特にアジアに輸出されているケースがあるのです。

編:アジアに輸出ですか。何のために?

北:もちろん中古品の太陽光パネルとして再利用するためと思いますが、疑った見方をすると素材として輸出して海外の安い人件費で手分解して有価になる素材だけ回収しているのではないかと考えることもできます。これは廃プラスチックのリサイクルで近年問題になっていたことと同じ図式なんです。

編:なるほど。廃プラスチック問題ではリサイクル材と称して中国や東南アジアに輸出された廃プラスチックがリサイクルの過程で地域の環境汚染を引き起こしていましたが、廃パネル含めた電気機器でも同様の問題があるんですね。

北:はい、家電製品に関しては日本国内に家電リサイクル法があるにも関わらず有価物として海外に輸出されているケースが未だにあるそうです。廃パネルも同じ問題が起こる可能性があるので注意しなければいけません。

編:日本だけでなく、海外のことも考えて 処理をしないといけないんですね。では、具体的にどのような手続きをすれば良いのでしょうか?

北:適切な処理をするには、まず廃パネルが産業廃棄物のどの種類に分類されるかを知る必要があります。先程さらっと言いましたが、産業廃棄物は20種類に分類されています。【図表7】を見てください。

【図表7】20種類の産業廃棄物と具体例

出典:日本産業廃棄物処理振興センター

編:産業廃棄物はこのように分類されてるんですね。でも、廃パネルに当たる項目はどこにも書かれていませんが、太陽光パネルが新種の廃棄物だからですか?

北:いえ、先にも紹介した通り、太陽光パネルは厳密に言えば電気機械器具の一種でテレビやエアコン、その他家電製品と変わりありません。電気機械器具は、複数の種類の素材が混合して、複合しているために容易に分けることが出来ない一体不可分の廃棄物として扱われます。

編:一体不可分ですか。聞きなれない言葉ですね。

北:これは専門用語ですが、要は様々な素材が混ざっているということですね。ここでまた基本事項2に戻りますが、太陽光パネルの構造を思い出してください。ガラス、アルミフレームと続いて、次に多い割合の素材は何でしたか?

編:そうですね。次に多かったのは、バックシートやジャンクションボックスですから、プラスチック素材ですか?

北:その通りです。つまり、廃パネルは産業廃棄物として処理するときに「(6)廃プラスチック類」「(8)金属くず」「(9)ガラスくず、コンクリートくずおよび陶磁器くず」の3つが混合したものとして扱う必要あるということなんです。

編:なるほど。産業廃棄物分野は奥が深いですね。では、この分類を知ることにはどういった意味があるのでしょうか?

北:それは良い質問ですね。最初に産業廃棄物の処理は排出事業者が責任を持つと説明しましたが、実際に排出事業者が直接処理をすることはほぼ無くて、それぞれの分類ごとに収集運搬や処理の許可を持った会社に委託することが一般的です。我々は排出事業者として、適切な許可をもった廃棄物処理会社を選ぶ必要があるのですが、これが意外と難しいのです。

編:どういった点が難しいのですか?

北:収集運搬や処理の許可を持った廃棄物処理会社は全国にたくさんありますが、廃パネルの場合、上記3つの素材に分類するために破砕や分別等の事前処理をする必要があります。また、有害物質の鉛が含まれていることも考慮しなければいけないので、許可だけでなく、事前処理から有害物質の適切処理までできる総合力をもった廃棄物処理会社が必要とされています。

編:なるほど。そういった総合力のある会社はまだ日本国内には少ないのですか?

北:そうですね。数年前までは、基本的な情報自体が不足していたこともあり会社探しは大変でした。しかし近年では、総合力のある会社も増えてきており、また2018年7月に太陽光発電協会(JPEA)が「太陽電池モジュールの適正処理(リサイクル)ができる廃棄物処理業者」(http://www.jpea.gr.jp/pdf/t180827.pdf)を公表したことで以前よりは容易になりました。

編:なるほど。太陽光発電協会も協力して廃パネルの適正処理の体制が整えられているのですね。

北:はい、色々な組織が関わって、廃パネルの処理や関連法は日進月歩で進化しています。この点に関しては、基本事項5で詳しく説明します。

 最後に、処理を委託する会社が見つかった後の手続きですが、まず初めに廃棄物処理法に基づいて、収集運搬や処理の会社と廃棄物処理委託契約を結びます。次に、廃棄物の種類ごとにマニフェストと言われる産業廃棄物管理票を発行し排出事業者として廃パネルがきちんと最終処分されたことを確認する必要があります。具体的な処理方法については、次回ご説明しますね。

編:排出事業者が最終処分まで見届ける責任があるんですね。あまり知らない分野でしたが大変勉強になりました。

北:はい。次の基本事項4では、最終処分まで含めた処理法用やリサイクル方法について詳しく紹介したいと思います。

編:ありがとうございました。


出典:https://www.env.go.jp/recycle/car/pdfs/h28_report01_mat05.pdf