太陽光発電所の廃パネル問題とは?何が問題で何が正しい?④・完結編

編集部staff

編集部staff

こんにちは、blog編集部です。今日は最近どこでも目にするようになった太陽光発電所の太陽光パネルについて、その廃棄方法や現状の問題について学ぶ最終回です。


旅する自然電力のでんき -voyage to renewable world-

前回までは、

基本事項1:太陽光パネルの種類について~有害物質はどこにどれだけ含まれるのか?
基本事項2:太陽光パネルの構造について~太陽光パネルは本当に危険なのか?
基本事項3:廃棄物処理法の仕組みについて~廃パネルは有価物それとも廃棄物?
基本事項4:処理やリサイクル方法について~廃パネルによって最終処分場が逼迫するのか?

について教えてもらいました。

引き続き、自然電力グループの 北 俊宏さん(juwi自然電力株式会社 プロジェクトマネージャー)に伺っていきます。北さんは前職では産業廃棄物処理事業や家電・自動車・金属スクラップなどの資源リサイクル事業に従事されており、自然電力グループでも発電所建設の際のプロジェクトマネジメントの他、太陽光パネル廃棄についても実証実験などで主導しています。

基本事項5:関連する法律や組織について~将来、適切に廃棄されず放置や不法投棄が増える?

北:最後の基本事項5では廃太陽光パネル処理に関連する法律や組織について、これまでとは違った視点から見ていきたいと思います。

編:宜しくお願いします。 

北:早速ですが、基本事項3、4で法律の話をしましたが、それらはどこの省庁が管轄している法律でしょうか?

編:廃棄物処理法や循環型社会形成推進基本法について教えてもらいましたが、どちらも環境省から発令されたものですよね。

北:その通りです。廃棄物の処理やリサイクルに”環境”関連の法律は環境省が管轄していることが殆んどなので分かりやすいですよね。一方で廃パネルの処理を考えるとき、もう一つ重要な組織があります。太陽光発電事業をやってると頻繁に登場するので分かりますよね。

編:社内でよくMETIと言われてるのを聞きますので、経済産業省ですね。

北:はい。METIはMinistry of Economy, Trade and Industryの略で経済産業省を意味しますね。皆さんご存知の通り、2012年7月からスタートしたFIT法「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」により、再生可能エネルギーの固定価格買取が20年間に渡って保証されたことで太陽光発電が日本国内において爆発的に普及しました。

北:FIT法は経済産業省が管轄している訳ですが、廃パネル問題に関して経済産業省は何も対策していない訳ではありません。むしろ、環境省以上に積極的な対応をしていますが、環境省と経済産業省では重点を置くポイントが違います。

編:重点を置くポイントの違いですか?どういうことでしょうか?

北:下の図表12に簡単にまとめたので見てください。

【図表12】経済産業省と環境省の重点ポイントの違い 出典:環境省・経済産業省HPを基に編集部で作成

北:まず、先に触れた通り、経済産業省と環境省では管轄している法令及び対象者が違います。経済産業省はFIT法を管轄しており、その対象者は太陽光発電事業者(他の再生可能エネルギーは省略)となります。一方、環境省は廃棄物処理を管轄しており、その対象者は排出事業者です。ここであることに気付きませんか。

編:何でしょう。

北:実は、FIT法の発電事業者と廃棄物処理法の排出事業者は同じなんです。

編:あ、なるほど。どちらも発電所の所有者ですね。

北:はい。どちらの法律も同じ対象者なのに、なぜ重点を置くポイントが違うかというと、FIT法は主に廃パネル発生前の発電事業者(発電所所有者)に対応しているのに対して、廃棄物処理法は廃パネル発生後の排出事業者(発電所所有者)に対応しているという違いがあるからです。

編:廃パネル発生の前と後ですか。

北:はい。もう少し詳しく見ていきましょう。まず、経済産業省では、太陽光発電含めた再生可能エネルギーを日本で根付かせることを第一優先にFIT法をスタートさせました。結果として、新規参入が増え太陽光発電が急激に伸びた訳ですが、一方で新規参入者の中には投資目的で参入した業者も多く、20年後固定価格買取が終了した時に、発電所の撤去や廃パネルの処理のための資金を積立ていない業者によって大量の不法投棄が起こることを懸念していました。

編:確かに、発電事業者には不動産のような投資目的や、海外からの一時的な投資目的で参入した業者も多いと聞きます。

北:そういった懸念より、経済産業省では20年後の発電所の撤去費用及び廃パネルの処理費用を発電事業者に確実に積立させることを目的として対応策が打たれてきました。

まず、2018年4月2日に発令された「事業計画策定ガイドライン」の中で撤去(廃パネル処理含む)費用積立の義務化が打ち出されました。続いて、2018年7月23日には「廃棄費用(撤去及び処分費用)に関する報告義務化について」の文書が発令されました。また、積立費用の金額に関しては、まだ試算段階であるものの資本費(開発費用+建設費用)の約5%以上が望ましいとされています。

編:なるほど。既に経済産業省として対策を打たれている訳ですね。

北:はい。経済産業省では、発電事業者による積立を確実に実施させる施策として、省内での継続したワーキンググループの中で、2022年開始を目途に外部積立、内部積立の制度運用も視野に対策を進めています。

編:そこまで踏み込んだ施策が進められてるとは知りませんでした。

北:そうですね。太陽光発電所は良くも悪くも世間からの関心が高いため、経済産業省としても将来予想される問題に対して早めに対策し解決することで、太陽光発電所を長期的に安定した電力として位置付けたいという意図があるのだと思います。

編:なるほど。

北:次に、環境省としては、海外(特にヨーロッパ)でFIT法が先行して始まっているため、FIT開始当初から廃パネル発生への懸念は持っていたと思われますが、FIT法の管轄ではないことから当初は明確な対策を打ち出せていませんでした。そういった中で、環境省は自身が管轄する法令を通して廃パネルが排出された後の対策を進めてきました。

北:まず、2016年3月に「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第1版)」を発表しています。これまでも様々な機関や業者と実証実験はされていましたが、このガイドラインが最初の明確な環境省としての処理・リサイクル方針を打ち出したものです。

次に、2018年7月には「太陽光発電設備のリユース・リサイクル・適正処分及び 導入に当たっての環境配慮の推進について」が発表され、環境大臣自ら廃パネル問題に対して積極的に関与していくことを示した形となりました。実はこの発表の前には関係業者へのヒアリングがされており、そこで自然電力グループもヒアリングに参加したんですよ。

編:そうなんですね。知りませんでしたが、少しでも私達の経験が活かされるなら嬉しいですね。

北:そうですね。次に、2019年1月には「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版)」が発表され、より世間に対して廃パネル処理の方針が具体的に周知されたのではないかと思われます。ここまでで分かるように、環境省は廃パネルが発生した後の排出事業者や廃棄物運搬・収集・処理業者に対しての情報提供や実証実験による技術提供などに重点を置いて施策を実施してきたことが分かると思います。

北:以上までの話を時系列でまとめた表が以下の表です。

【図表13】廃太陽光パネルに関する法令等のまとめ   出典:環境省・経済産業省等のHPを基に編集部で作成

 

 編:なるほど。こうして時系列で見ると、経済産業省や環境省がどのような姿勢でどこに重点を置いて施策を実施してきたかが、とてもシンプルに理解できますね。大変勉強になりました。

北:太陽光発電事業はこの8年間で急激に増えてきましたが、まだまだ発展途上です。廃パネル処理問題も、技術面・法律面・施策面で日進月歩で成長しています。太陽光発電は世間から注目される中で、一部分を切り取って良い悪いと議論されることがあります。

私達は太陽光発電事業の現場に携わる者として、複雑な問題を分かりやすく世間に発信していくことが大事ではないかと思っています。

編:そうですね。現場に近い私たちだからこそ正確な情報を発信できますね。

北:はい。最初の話に戻りますが、最初は廃パネル問題に懐疑的な意見を持っている方でも、基本事項1から基本事項5まで噛み砕いて説明していくうちに、「理解できた」「大きな問題でないことがわかった」とおっしゃって頂ける方がたくさんいます。

私はこれからも情報を発信していきますが、今回のブログを読んで理解された方が新たな発信者となって広めていって頂けたら嬉しいです。

編:そうですね。私達編集部としても、このブログが1人でも多くの方の廃パネル問題の正しい理解に役立てたらうれしいですね。

北:今回はこのような機会を頂きありがとうございました。今回はこれで終わりですが、次の機会があれば「海外の廃パネル処理問題」についてもご紹介できればと思います。

編:はい、是非またお話聞かせてください。どうもありがとうございました。